ふと、プランテーションという言葉が思い浮かぶ。あれはたしか奴隷を使って大規模農業をすることを示す言葉だっただろうか。
 奴隷がいるのだろうか。
 私は奴隷にされるのか。と、見回しても広い広い畑に人影はほとんど見当たらない。
 やっと見かけた人の服装は奴隷とは思えないような白いワンピース。
 そう、色が白だ。農作業をするには白は汚れが目立つからとてもふさわしくない。
 と、眺めていたら女性は両手を広げて、何やら口を動かしている。
「!」
 すごい!
 機械化じゃない、魔法化されてるんだ!だから、少人数でも広大な土地で農業ができる。
 目の前には、土の中から飛び出した人参のような作物が浮かんでいた。
 その数1000本はあるだろうか。1か所に集まっていく。
 手を汚さないで人参を収穫……だから白い服でも問題ない……のか。
 ふいに白いワンピースの女性が振り返った。
「ああ、荷運び、ちょうどよかったわ。収穫した野菜はあそこに集めてあるからすぐに運んでちょうだい」
 女性に話しかけられ、すのこの運転手の男が、すのこを止めた。
「ちょっとあっちにコレ、捨ててこないといけませんので、後で来ます」
 ぺこぺこというよりも、へこへこといった様子で男が頭を下げる。
「は?捨ててくる?」
 怪訝そうな目を女性が私に向けた。
「魔力ゼロの低級民」
 男の言葉を聞いて、女性が目を吊り上げた。

「は?汚らわしい!私の作った野菜を運ぶ乗り物に、低級民が乗るなど、ありえませんわ!」
「いえ、でも陛下のご命令で」
「捨てればいいんでしょ?捨てる場所は"外"ならどこでもいいんでしょ?」
 外?
 女性は男が頷くのを確認してすぐに両手を広げた。
「【大地の力よ、かの異質なる穢れし者を外へと弾き飛ばせ】」
 女性が魔法の呪文を唱えると、すぐに私の体は宙に浮き、すごい勢いで畑の上を横切り、街から遠ざかり、そして、何もない土地に落下した。
「いっ」
 小さな声が漏れる。
 勢いよく背中が地面に叩きつけられ、息が止まる。痛いというよりも苦しい。
 頭をぶつけなくてよかったんだろう。意識ははっきりとある。苦しみが少し楽になると、今度は痛みがやってきた。
 背中、それから肩……。うー、肋骨は無事かな……。
「ああ……外……か」
 地面に寝ころんだまま、視線を動かす。