魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

 パカリと鞄の蓋を開けて、テーブルごと料理を鞄に入れる動作をすれば、あっという間に吸い込まれるようにしてテーブルと料理が目の前から消えた。
 魔法、すごい。
『うわぁーーー、ご飯ぅぅぅぅーーーっ』
 目の前に泣き叫ぶイケメン幽霊。
『もっと、もっと食べたいぃぃ、300年ぶりの食事っ!』
 あ、ディラがこっちを向いた。どうしようかな。これ、食べさせなければ呪い殺すぞー系になる?困ったぞ。
「こ、これからは、ほら、私がご飯食べるたびに、ちゃんとお供えするからね?毎日私がちゃんとご飯食べられれば、ディラさんも毎日食べられるからね?」
『ああ!そうか!毎日、ご飯』
 ディラの目がキラキラとしている。
 ……あれ?よく考えたらさ、剣に取りついてる霊だったよね?ってことは、もし呪い殺すぞー系に変貌したら、剣から全速力で逃げ出せばいいんじゃないのかな?
『じゃぁ、夕飯は、ステーキが食べたい、ステーキ。ドラゴンステーキ』
 は?ドラゴンステーキ?
 ……ディラが食べたいものをお供えする、お供えのお下がりを私が食べる……って図式だと、その、ドラゴンって私も食べることになるよね?
 あーっと、未知の食材は先送りしちゃだめですかねぇ?
 ……いざとなれば剣を置いて……逃げ出す。
 逃げる……どっちに?
 振り返れば、薄いベールに囲まれた街。
 生きていくなら人がいる街に行くべきだろう。地球ならば。
 だけれど、どうやらこの世界では私のように魔力0の人間は、人のいるところは危険があるように思う。世界中どこでもというわけではないだろうけれど、少なくとも、あの王様が納めている国……あのベールの中の街では危険そうだ。
 かといって……。
 前を見ても右を見ても左を見ても、荒野。砂漠ではないのがせめてもの救いなのだろうか。砂嵐には出会わないだろうから。
 草木も生えない土と岩の地面が延々と続いている。
 どれくらい歩けば、水や食べ物がなんとか手に入りそうな場所にたどり着くのやら。
 手持ちは、ディラからもらったエリクサーと収納鞄。
 ……と、剣。
「ディラ、このあたりのこと詳しい?どっちに進めば街とかあるのかな?」
 ディラが自信満々に口を開いた。