魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

 ディラさんがシチューの皿に手を伸ばして、さらに目を丸くする。
『すごい、触れる、え?なんで?』
 スプーンを手にシチューを食べ始めた。
 私から見れば、本物のシチューはそのまま、テーブルの上。シチューの魂というの?霊体?半透明になったシチューを半透明のディラさんが食べてるように見える。
『300年ぶりの食事!うまっ!うまっ!』
 あ、泣いた。
 泣きながら食べてる。
「こちらもお供えさせていただきます。お召し上がりください」
 シチューの隣に、プリンのような食べ物を置いた。テーブルの上にはたくさんの料理が用意されている。あれほど嬉しそうに食べているのだから、他の物もどんどんお供えしたい気持ちはあるんだけれど……お供えしたものは……。
『ああ、幸せ、もう死んでもいい!』
 死んでますけどね。
「ではお下がりをいただきます」
 そう、お供えしたものを下げた後は、お下がりとしていただく。捨ててしまわない。……つまり、いっぱいお供えしたいけれど私が食べられる分しかお供えできないのです。捨てるわけにはいかないので……。
「あ、本当ですね、ディラさんのおすすめのシチュー美味しいです。ほろほろに煮込まれたうさぎのお肉。あ、うさぎの肉は初めて食べましたが、臭みもなくて食べやすい」
 もぐもぐ。
 ごくん。
 ん?あれ?お下がりを食べたからなのかな?ちょっと霊力上がってませんか?ディラの姿が、少しだけ濃く見えるようになったような?気のせい?単に食べるもの食べて元気が出ただけかな。滝修行とかもしてないのに簡単に霊力上がるわけないか。
 あ、むしろ、ディラの方が食べて元気になってパワーアップしたからかな?
『うおう、甘い物も美味い~』
 天を仰いで、プリンに涙するイケメン。
 見ちゃいけないものを見た気がするので、いささかさっきよりもはっきりと見えてるディラから視線を逸らす。
「おさがりいただきます」
 プリンは、私が食べたかったので選びました。もぐもぐ。うん、手作りプリンの味だ。卵の風味が濃い。しっかりと固さのある蒸しプリン。
 甘さは控えめ。懐かしい味のするプリンだ。
「はー、お腹いっぱい。残った料理はどうしたらいいのかな?」
『収納鞄に入れる動作をすれば入るよ』
 そうなんだ。

 ごちそうさまでした。残りは収納鞄に。