魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

 慌てて自分の体を見るけれど、桃色の光なんて見えない。
 あれ?もしかして、幽霊って、人間の目とは違うものが見えてる?例えば、入れ物じゃなくて中身。人間の魂が見えてるとか?
 魂か……。そうすると、私の魂はかわいいのか?……精神年齢が反映してるとしたら、うん、小学生のまま成長してない自信あるわ。小学生女子に見えてるなら、まぁ、かわいいという形容詞が当てはまらないこともないか?小柄だったしな。いや、今も大柄ではないけれど。クラスで前から2番目が定位置だった。
『かわいい』
 やめて。イケメンに見つめられるなんて、苦行ですよ、苦行。恥ずかしさと、いたたまれなさとで、いくら相手が幽霊でも憤死しそう。
 あ、そうだ。
「あの、あなたが好きな料理はどれですか?」
 他に意識を反らさせよう。
『あなた?ああそうか、僕の名前は、ランディラハード。ディラって呼んでくれ』
「ディラさん?あ、私は花村由紀、えっと、ユキです」
『ユキ、僕の好きな料理はそれだよ。ウサギ肉のシチュー』
 ディラさんの指さした先には、茶色いシチューの入った鍋があった。湯気が立ち上っている。
 ウサギ肉のシチューと、わざわざ肉の名前を言うあたり、肉が好きなんだろうとあたりを付けて、鍋から皿に肉を多めにシチューをよそう。
 机の上に置いた後に、2mほど先にある剣を拾い、シチューの前に立てかけた。
『うわ、おいしそうって、食べられないよ、こう見えても、僕、人間じゃないからね?』
 知ってるし。とっくに。
「ディラさんにお供えさせていただきます。どうぞお召し上がりください」
 いろいろな宗教、それに宗派によってお供え物の解釈は様々だ。とある宗教では仏さまは湯気を召し上がるので、冷めたものではなく温かいものをお供えするようにという話だし、別のものでは仏さまは喉が渇いているので、水分の多い果物をお供えするとよいというのもある。

 何を信じるかは人それぞれだと思うけれど、とりあえず仏さまに気持を伝えることが一番大事なのかなと思っている。
『は、あれ?何、これ……魔法?』
 ディラさんが目をまん丸にしている。
「魔法じゃないですよ、私、魔力ゼロなんで、魔法は使えないんです」
『魔力ゼロ?いや、だって、僕のこと見えてるというか、いや、それより、今は、なんで、匂いがするの?食べられたりして?』