「松野くんは楽しくないの?」

「面倒くさいです、いろいろ。さっきも女子にしつこく絡まれて大変でした」

「女子に……もしかして、女の人が苦手?」

「特に意識したことはないですが、女嫌いとはよく言われます。うるさいやつが嫌いです」


 うるさいやつ……少なくとも私はそう思われていないということで大丈夫かな?

 初めて会った時は『うるさい』と言われたけれど。


 その後も会話は続き、時間はあっという間に過ぎていった。

 私の降りる駅がアナウンスされたことで、終わりがすぐそこだということに気がついた。


「あっ、じゃあ私はここで!」
「俺も先輩を……」


 慌てて立ち上がると、なぜか松野くんも立ち上がろうとしていた……けれど。

 すぐに座り直す動作をしていた。


「松野くん?」
「なんでもないです。今日はありがとうございました」

「ううん、私のほうこそありがとう!」


 今日の会話で、私の知らない松野くんがたくさん知れた気がする。

 また会う機会があればいいなと思うくらいには楽しい時間だった。