逃げたい…‥けれど足が動かない。
 近づいてくる彼に何をされるのかと思い、怖くなってギュッと目を閉じたときだった。


「昨日は悪かったな」
「……え?」


 思わず顔をあげる。

 私の前に立った彼はどこか恥ずかしそうに視線を外していた。


 いま、彼に謝られた……?


「もしお前に起こされてなかったら絶対寝過ごしてたのに、きつく当たっただろ?俺、寝起き不機嫌で状況理解する前にお前にああ言ったんだ。だから本心じゃないし、感謝してる」

「……」
「……なんか言えよ。結構恥ずかしいんだけど」

「あっ、すみません……!私は大丈夫なので気にしないでください!」


 謝られるとは思っていなくて、反応するのに遅れてしまった。