「律はいいのに。俺はだめなんだね」



律くんに助けを求めて、視線を送っても駄目だった。

律くんは勉強の手をとめて、にこにこしながら静観していた。



「理央が触れてくるのには慣れてない、から……」



律くんはいつも抱きしめたりしてくるから慣れてるけど、理央からそんなことをされたことはほとんどなくて。

だから、理央と少しでも触れ合うと少しドキッとしてしまうんだ。

一番はキスされたことをまだ覚えているから。理央に触れられるところが熱くなって、自分の感情がわからなくなる。

今だって、言うの恥ずかしかったんだからね。

振り絞って出した微かな声は理央に届いたかな。



「それは反則だろ」



理央はずるずると机にうなだれた。

顔は見えないけど、耳は赤く染まっていた。

あれ、理央照れてるの。

「理央の負けだね。素直な愛乃の前では理央も完敗か」と律くんが笑った。

何が負けなんだろう。とにかく、律くんと理央との間のどんよりとした空気がなくなったのはよかったなあ、と思ったのだ。