義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】

 和樹が馬鹿にしたように二人のやり取りを見ている。
「で、何のために俺の大事な人を召喚しようとしたんだ?」
 和樹が、私の手を引っ張って、背に隠した。
「おお、その方が我らが求めている聖女様!」
 はい?

■22

 私が、聖女?
 いやいやいや、ないないない。
 二十歳過ぎて聖女とかないわ。ない。
 だいたい、そこは10代の子でしょ。いや、最近の流行はアラサーとかもあるか。一番中途半端だから、20代前半とか!
「はっ、世界を救ってほしいとかそういうくっだらない理由じゃないよな?」
「くだらないとはなんだ!立派な理由ではないかっ!」
 和樹がふんっと鼻を鳴らす。
「くだらない。なんで、わざわざ別の世界の人間を巻き込む?自分たちで何とかできない世界なら、滅んでしまうのが世の理だろう!」
 そうですね。誘拐と変わりません。
 ブラック企業が問題になってるけれど、それ以上にひどい行いですよね。
 拉致誘拐からの強制労働。下手したら衣食住は保証されていても軟禁状態。無給に無休。
 世界を救ったそのあとはポイされることもある。……あ、全部小説の話だけど。もしかしたら、もっと恵まれた待遇が待っているのかもしれないけど……。でも……。
 きっと、家に帰すつもりはなかったんだろうな。
 自分たちが異世界に逆召喚されたことに「そんなバカな」と言っていたくらいだ。
 あ、反転って、そういうことか!
「ひどい、それでもお前は人か!」
「ひどいのはどっちだ。無関係な者を自分の勝手な理屈で巻き込むな」
「生意気な!誰に向かってそんな口をきいている!私は超賢者ロックであるぞ」
 禿頭が唾を飛ばしながら主張した。
「超賢者って、偉いの?」
 思わず首をかしげる。
「知らねぇ。俺の時代には大賢者までしかなかった」
「は?俺の時代?何を言っている?超賢者を知らないとは愚か者め」
 和樹がはぁーっとため息を一つついた。
「愚かなのはそっち。ここさぁ、お前らの世界じゃないんだけど?そんなに立派っていうんなら、もう出てってくんない?自分の世界に帰るなり、こっちの世界で生きてくなり好きにすれば?」
「なんだと?勝手にこの世界に連れてきて、追い出すつもりか!」
 白髪が怒った。
 ああ、もう、あきれていいでしょうか。