義弟が『俺、異世界賢者の転生者だ』と言い出した【中編】

 ぱぁんと角砂糖がはじけるように光に粒子が飛び散り、そして、砂鉄が磁石に引き付けられるように粒子が別の文字を形作る。
 和樹が素早い動きで、どんどんとそうして文字を書き換えていく。
 なんで、そんなことができるの?
「姉ちゃんは渡さない」
 最後の文字を書き換えた時、視界が真っ白になった。
 ああ、飛ばされる!
 目をつむるのが怖かったけれど、まぶしさに思わず両目をきつく閉じてしまった。
「反転――」
 和樹の最後の言葉……忘れない。
 はんてん……?
 斑点?半纏?飯店?
「:.;.@[32532.t@:@:.]@#%$&++*」
「(&'&%E"=+`*?*><`{~;/:」
 耳に、わけのわからない言葉を話す男の声が聞こえてきた。
 ああ……。
 私、本当に、異世界に召喚されちゃったんだ……。
 目を開けたら、見知らぬ景色が広がっているんだ。
 ああ、言葉が通じないスタートは厳しい……。
 と、思っていた思いが通じたのか。
「そうか。言葉が違ったな。自動翻訳魔法が必要か」
 と、日本語が聞こえた。
 ほっ。
 少しだけほっとしたけれど、でも何も問題は解決していない。だけど……。
 今聞こえた人の声が和樹の声にそっくりだから……。少しだけ、少しだけ異世界で生きていけそうな気がしてきた。
 声の主がどんな人物なのか知りたくて固く閉じていた目を開く。
「ここはいったいどこなんだ……」
 いや、どこって、和樹の部屋だ。
「お前は誰だ」
 お前と呼ぶあなたこそ誰だろう?
 プラチナブロンド?白髪?の青白い顔の男と、禿頭のやせた男。
「いったい何が起きたというのだ?」
 本当、いったい何が起きたんだろう?
 ここは和樹の部屋だし、私も和樹も魔法陣が現れる前と変わらず部屋の中にいるだけ。
 ただ違うのは、見知らぬ異世界の魔導士のような服装をした男が二人増えたということ。
 二人とも西洋系の顔。そこそこ整っている。一人は顔色悪くてもう一人は痩せて禿げだけど。
「ようこそ異世界へ」
 和樹がにやりと笑って男たちに答えた。
「いっ、異世界だと?」
「そうです。あなた方が召喚しようとしていた異世界の人間が住んでいる世界ですよ」
 男たち二人が顔を見合わせる。
「召喚するつもりが、召喚されてしまったというわけか!」
「そんなバカな、前代未聞、そんな魔法があるなんて聞いたことがない」