「相変わらずだね。姉ちゃん」
 和樹がふっと笑って本をもってリビングを出ていった。
 え?何、今の「ふっ」って。
 ほめてないよね?
 あきれた?
 いや、だって、ちょっと考えちゃっただけだよ?想像しただけで……。
 大丈夫だよ、さすがに、もうサンタクロースは信じてないし、魔法使いだっていないって理解してるし。
 地底人は……いるかもしれないけど……。
 頭をふるふるっと大きく振る。
 と、とにかくゆきちゃんにラインしよう。

『祝』
 と、まずはウサギがはねてる祝画像のスタンプを送信。
『和樹が話かけてくれましたぁ~』
 速攻、ゆきちゃんから何かを口から吐くトカゲのスタンプが送られてきた。
『ブラコン』
 うおー、想像通りの言葉が返ってくる。
 それから少しして、
『でも、よかったね』
 というメッセージと『おめでとう』っていうカエルがジャンプしてくす玉を割る動画スタンプが送られてきた。
 うむ。あいかわらずゆきちゃんは爬虫類好き全開ですね。
 あ、カエルは両生類だ。
『よくないよー、なんかうまく会話できなくて、ふっと笑って立ち去られたのっ!』
『何言ったの?』
『異世界の勇者様が転生したハエに和樹が殺虫剤をかけたから、あーっってなって』
 ゆきちゃんから連続でスタンプ画像が送られてきた。
 青い顔して突っ伏しているトカゲ。
 ひっくり返っているカエル。
 長い舌を木に巻き付けふらふら揺れてるカメレオン。
 はい。自分でも失敗したと思ってます。
 というわけで、ペコペコ頭を下げるウサギスタンプを返しておいた。

■2

 その日から和樹は3日間、本を読んでは別のを借りていった。
「読むの早いね」
 という私の言葉に和樹がちょっとびっくりした顔をする。
「そういえば……」
 と、何か言おうとして言葉を飲み込む。
「そういえば?」
 なんだろうか?
 和樹に貸した本と、次に貸そうかなという本の山を見る。
 3日で16冊は早いと思うんだけど。気が付かないの?
 自覚がないほど、ラノベそ気に入ったのかな。
 時間を忘れて読みふけると、気が付いたら読んだ本が山になってても不思議じゃないよね。
 にしても、早すぎない?
 問題ないけどね。うん。問題ないよ。
 いっぱいラノベ好きになって、たくさん本読んでくれたら、和樹と一緒に本の話できるかもしれないもんね!
 楽しみだなぁ。