到着すると、美しいエントランスホールが現れた。籐で統一された椅子やテーブルが品よく並べられており、椅子のカバーは真っ白だった。青い空とそのカバーの白さが絶妙に絵になっている。隆に高級感のあるところに連れて行かれるのはもう珍しくない夏美だが、このブセナテラスは、夏美の好みにあっていた。カバーの真っ白な清潔感が、心地よい滞在になることを保証しているようだった。
少し部屋で休もうか、と隆が連れて行ってくれた部屋も、想像どおり美しかった。ぱりっとしたシーツが張られたベッドには、恭しさすらあって、腰かけるのも気が引けるくらいだ。
そう言うと隆は笑った。
「もっとおくつろぎください、お嬢さん」
「わかってるんだけど…」
部屋に通されてうきうきの止まらない夏美は浴室や洗面所も覗いた。浴室とは別にシャワールームがあるのに驚いた。さらに、部屋の外には泊まり客が泳げる大きなプールがあった。部屋の窓を開けると、もうそのプールサイドを歩けるようになっている。
「すごい…ここで泳いでも怒られない?」
目を輝かせて夏美が言う。
「怒られるよ。僕が選んだ水着を着たら、大丈夫だけど」
「あんまり派手なのじゃないなら…買ってもらおうか、な」
「そうこなくちゃ」
隆は嬉しそうに夏美を抱きしめた。荷物をほどき、少し休憩してから、ホテルのブティックへ行った。隆は、紺色のビキニを選び、夏美はどぎまぎしたが、旅先ということもあって、少し大胆になってみることにした。
昼さがりのプールに入ると、水はそう冷たくなかった。背泳ぎをしながら青い空を見つめると、この世ではないようだった。
「すごい…なんか、いろいろすごいよ、隆さん」
ぼんやりと呟くと、まだまだこれからだよ、と夏美に水をかけた。やだ、やめて、と夏美も応戦する。プールではしゃいでいると、時間はあっという間に経ち、夕食の時間になった。
美しい庭を見ながら食事のできるテラス席を、隆は予約しておいてくれた。出てくる料理は、どれも美味しく、あまりお酒が強くない夏美でもワインがすすんでしまった。
「なんだか、あんなに忙しかったのが嘘みたい・・・」
夏美はこの怒涛の半年のことを思った。濱見崎のダメ出しにうまく応えられず、眠れない夜もあった。描いても描いても、永遠に終わらないかも、と思った夜もあった。いろんな厳しい日々が、夏美の体を通り抜けていった。
少し部屋で休もうか、と隆が連れて行ってくれた部屋も、想像どおり美しかった。ぱりっとしたシーツが張られたベッドには、恭しさすらあって、腰かけるのも気が引けるくらいだ。
そう言うと隆は笑った。
「もっとおくつろぎください、お嬢さん」
「わかってるんだけど…」
部屋に通されてうきうきの止まらない夏美は浴室や洗面所も覗いた。浴室とは別にシャワールームがあるのに驚いた。さらに、部屋の外には泊まり客が泳げる大きなプールがあった。部屋の窓を開けると、もうそのプールサイドを歩けるようになっている。
「すごい…ここで泳いでも怒られない?」
目を輝かせて夏美が言う。
「怒られるよ。僕が選んだ水着を着たら、大丈夫だけど」
「あんまり派手なのじゃないなら…買ってもらおうか、な」
「そうこなくちゃ」
隆は嬉しそうに夏美を抱きしめた。荷物をほどき、少し休憩してから、ホテルのブティックへ行った。隆は、紺色のビキニを選び、夏美はどぎまぎしたが、旅先ということもあって、少し大胆になってみることにした。
昼さがりのプールに入ると、水はそう冷たくなかった。背泳ぎをしながら青い空を見つめると、この世ではないようだった。
「すごい…なんか、いろいろすごいよ、隆さん」
ぼんやりと呟くと、まだまだこれからだよ、と夏美に水をかけた。やだ、やめて、と夏美も応戦する。プールではしゃいでいると、時間はあっという間に経ち、夕食の時間になった。
美しい庭を見ながら食事のできるテラス席を、隆は予約しておいてくれた。出てくる料理は、どれも美味しく、あまりお酒が強くない夏美でもワインがすすんでしまった。
「なんだか、あんなに忙しかったのが嘘みたい・・・」
夏美はこの怒涛の半年のことを思った。濱見崎のダメ出しにうまく応えられず、眠れない夜もあった。描いても描いても、永遠に終わらないかも、と思った夜もあった。いろんな厳しい日々が、夏美の体を通り抜けていった。



