体に伝わる体温と、包まれる匂いに私の胸はきゅうっと切なく締め付けられる。

だけど、悠くんの腕の中はとても心地いい。

そう思えるほど、悠くんは私の中で特別な存在なんだと実感させられる。


「帰る前にキスしてもいい?」

「……」


私は何も言わず、まぶたをそっと閉ざした。

すると、悠くんの唇が私のものに優しく触れた。

息が出来なくなる長いキスも、一瞬だけの優しく触れたキスも、全て甘かった……。






悠くんに送られて部屋で一人きりになった頃、私はSNSのアカウントに一言に呟きを投下した。


“さっきまで一緒にいたのに、もう会いたくなった……”


次会えるのはいつになるかな。毎日会いたいと思うのは私だけ?

流石に明日も会いたいと悠くんに直接言う勇気はなかった。

悠くんに面倒くさがられたら立ち直れないよ。

我慢して二、三日経ってから、私から誘ってみようかな。



夕飯を食べた後、ベッドの上に座ったままどこに誘おうかなと考えごとに耽っていると。

八時頃、ラインに悠くんからメッセージが来た。

スマートフォンを操作し、トークルームを開くと。


《今週の金曜日、猫カフェ行ってみない?》


思いもよらないお誘いに、私はスマートフォンを枕の上に落としてしまった。

来週じゃなくて今週また会えるの!?

嬉しい……っ!


《行きたいっ》


気付けば指が勝手に返信をしていた。

メッセージが来てから一分も経っていないと思う。


スマートフォンの中のスケジュールを見ると、その金曜日まであと三日だった。

寂しさで沈んだ私の表情は嬉しさで晴れ晴れしたものに変わっていた。

すでに楽しみでしかたないよ!

部屋で一人そわそわしている私は怪しい人だと思う。


「早く金曜日にならないかな……」


ぽつりと呟いた私の独り言は静かに消えていった。