もし、悠くんが告白して付き合うようになったらこうやって話せなくなるの……?

振られてしまえばいいのに。


我ながら最低だと考えていた。

悠くんは私を助ける為に骨を折ってくれるのに、私は悠くんを優先してあげることが出来ない。

顔が見えないのをいいことにそんな自分に声を出さずに自嘲気味に笑った。


「ふふ、悠くんの声聞いたら安心しちゃった」

「それは良かったよ」

「視線くらいで頼ってごめんね」

「響が安心出来るなら、いくらでも頼ってよ」

 
悠くんの優しさが心に深く染みる。

 
「ありがとう……あ、そうだ」

「ん?」


緊張する。

だって、これから縁日に誘うんだから。

断られるのは目に見えているけどね。


「あのね……八月の十二日に悠くんの母校の近くの神社で縁日があるの。良かったら一緒に行かない?」
 

好きな人のところに行って欲しくない。

そんな気持ちから出た誘いだったけど、悠くんは何か話すことはなく無言を貫いていた。

いきなり好きでもない人に誘われても、困るよね……好きな人を誘うって言っていたし……。

 
「打ち上げ花火を見てみたいんだけど、一人で行く勇気はなくて……いいかな?」

 
数十秒ほどの沈黙が耐えられなくなり、私はおどおどとした口調で再び話し始めた。
 

「いいよ。行こうか」
 

……今、いいよって言った?
 

悠くんの返答は私を心底驚かせた。