「お金、遣わせてごめんね」

店を出た後、私は申し訳なさのあまり、恐縮になりながら悠くんに謝っていた。

「謝ることはないんだよ。これもストーカーに諦めて貰う為の策だよ」

「服を買うことが……?」


どういうことだろうと首を傾げると、悠くんは私に説明をしてくれた。


「身に付けるものを贈る行為は独占欲の表れなんだよ。好きな子が他の男の色に染まっているのは面白く思わないはずだよ」

「そうなんだね。そういう意図があったんだ」


なるほどなぁ、と思いながら、何度も大きく頷いた。

悠くんは過去の彼女にそういうものを贈ったりしたのかな……。

私は胸の中がチクリと棘が刺さったような傷みを感じた。

それを悠くんに悟られないように平静を装っていく。


「そうだとしても、お金を遣わせるのは申し訳ないよ……」

「響が笑っていられるなら何でもするよ」


目を細めて破顔する悠くんに、私は目を丸くさせていた。

……ああ、また落とされちゃった。

笑顔を向けられる度に、響と呼ばれる度に、悠くんへの気持ちがまた膨らんでいくよ……。


「悠くん、いつもありがとう……」


私は気恥ずかしくなってしまい、目を伏せてもじもじと謎の挙動を起こしていた。


ショッピングモールを出た頃は、まだ四時過ぎだった。

でも、悠くんの「家まで送るよ」の一言でお出かけは終わりを迎えた。

高校生だからもう少し遅くても大丈夫だと思ったけれど、悠くんにだって友達付き合いなどの予定がある。

もう少しいたい、と言うわがままを必死に飲み込んだ。