再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

「北川さんこそ濡れますよ。私、背が高いから窮屈ですよね」
「俺は平気。笹山さんが風邪引く方が嫌だよ」


北川さんの気遣いに、私の胸は温かさを通り越して熱くなり始めた。

その優しさが心に染みて、悲しさとは違う涙が出そうになった。


「どうして、私なんかに……」

「私なんかって?」


独り言聞こえちゃった!? 北川さんに聞かれたと思うと内心焦ってしまう。


「いえ、なんでもありません。行きましょう」


私は接点が急に出来て、欲張りになっていた。

私のような周りに嫌われている人間は、北川さんみたいな素敵な人に相応しくないの。

北川さんの隣は、桐谷さんみたいな皆に好かれる女の子が相応しい。

私を好きになって、と願うのはとても烏滸がましいことなの……。

私はお店に着くまでは道順の説明以外はだんまりを決めていた。



お店に辿り着き、店員さんに案内される。

コース料理を予約したから、後は料理が出てくるのを待つだけ。


「父に高校の入学祝いで連れて行ってもらったんです。美味しかったですよ」

「ふふ、楽しみだよ」


向かい合って座っている北川さんは琥珀色の目を細めて、柔和に微笑んでいた。


この店はお父さんに一度連れて行ってもらった。

適度に賑やかでアットホームな温かい雰囲気のお店を、私はひと目で気に入った。

このお店に北川さんと来れて嬉しいな。