再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません


着替え終えて、スマートフォンで時計を見ると、待ち合わせ場所に十分前に着きそうだ。

今回は遅刻せずに済みそうで良かった……っ。


北川さんはすでに待ち合わせ場所にいた。


待たせたかな……何だか申し訳ない。

私は慌てて数メートルの距離を駆けて行った。


「お待たせしました」


北川さんの目は私を捉えた瞬間、大きく開かれた。

驚かせちゃった?


「着替えてきたの?」

「はい。制服だと補導されるかもしれないから」


制服で夜の街を出歩くとそういった可能性があるし、北川さんに迷惑をかけたくなかった。

私服になれば大学生くらいに見られるからきっと大丈夫、なはず。


それより、伝えなきゃ……っ。


「北川さん、お誕生日おめでとうございます」


私は見上げるなり、北川さんの顔を見つめて笑みを浮かべながらお祝いの言葉を述べた。

傘を壊されたショックを引きずっているけど、何とか笑顔で伝えられた。


「良かったら受け取ってください。作りました」


私は手にしていた小さな紙袋を北川さんに差し出した。

紙袋の中に、ガス袋に入れられたマフィンが三つある。


「わざわざ俺に?」

「甘いものが苦手でも食べやすいようにしました」

「笹山さん、ありがとう。後でいただくね」


北川さんは破顔させながらそれを受け取ってくれた。

その笑顔に私は見とれて、ぽーっとなってしまっていた。