再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません


三日後の六月十八日……北川さんの誕生日を迎えた。

ラインでも「おめでとう」と伝えたけど、顔を見て直接伝えたい。

プレゼントは買いに行く時間が取れず、代わりに前日の夜に焼いたマフィンにした。



放課後、そわそわしながら一年のフロアである四階から軽やかな足取りで階段を降りていく。

上履きから、いつものローファーではなくハイカットのスニーカーに履き替えて、傘立てにある自分の傘を手に取ろうとしたけど。


「あれ? 傘がない……っ」


今日は夕方から雨が降ると予報で言っていたから、ちゃんと傘を持ってきたはずなのに。

他の学年の傘立ても見てみたけど見つかることはなかった。

どうしよう……。

狼狽えていた時、ふとゴミ箱に目が入った。

まさか。

恐る恐るゴミ箱の中を覗き込む。


「……っ!」


そこには無惨に折れ曲がった私の傘が入っていた。

じわり、と目が熱くなるのを感じた。

だけど、涙を零さぬように唇を噛み締めては堪えた。

だって、今日は好きな人の誕生日だから。笑って「おめでとう」と伝えたいから泣いちゃだめ。


駅構内のパウダールームにある着替えが出来るスペースに入り、制服から私服に着替えた。

服は何をしようか迷ったけど、無難にショートパンツにTシャツにした。

もう少し可愛いワンピースもあったけど、気合を入れているみたいで恥ずかしくなって辞めた。

女子の中ではのっぽな私。

似合っていないと思われたらどうしよう……なんて思ったりもした。

予約したお店はイタリアンだけど、ドレスコードがないカジュアルなところだから大丈夫。