その笑顔に魅せられて、私は血が沸騰したみたいに全身が熱くなるのを感じた。

もう北川さんをまともに見ることが出来なくなってしまい、赤くなっているだろう頬を隠すように両手で覆った。

それにしても、北川さんは自分の容姿を自覚しているのかな?

近くにいる年が近そうな高校生や大学生くらいの女の子の熱い視線が彼に集中している。


「あの人格好いいね」
「眼福……ずっと見てたい」
「ほんと、素敵……っ」


なんて囁きを耳で拾ってしまった。

格好いいと思っているのは私だけじゃないみたい。


「恥ずかしい……私、食べるのも好きなんですが、作るのも好きです」

「すごいね。昔従姉妹とシュークリーム作ってみたことがあったけど、生地がぺしゃんこになってね」

「難しいですよ。私も最初は失敗しました」


北川さんはとても聞き上手で、私はおだてられて木に登るおさるさんのようにお菓子作りの話をどんどんしていた。

こんなにお喋りしたの、何年振りだろ?

テンパリングなどの専門用語を出してしまっているのに、北川さんは嫌そうな顔をすることはなく(……と思いたい)、耳を傾けてくれた。


北川さんと過ごす時間は、あの頃と同じように楽しいものだった。