「友達と連絡取れなくて不便だったよね」


北川さんの言葉に、私の顔は強ばってしまう。

友達なんていない……無視されて、陰口を叩かれて、デタラメな噂を立てられて、嗤われている。

なんでこうなったのか、分からない。

日頃の行いが悪かったのか、無自覚に他人を傷付けていたのか。

いくら考えても堂々巡りで終わってしまう。



……こんなみじめな私を、知って欲しくない。


「そんなこと、ありませんよ……私、連絡はあまりマメじゃないんです」


彼の目を見て言うことが出来なかった。



程なくして、注文したものがテーブルに運ばれた。

頼んだいちごのタルトは、大きないちごが乗っていて、カスタードクリームがたっぷりある。

メニュー表の写真と変わらず美味しそうだ。


「いただきます」


早速手を合わせて、フォークで一口分を掬って食べてみた。

いちごのさっぱりとした酸味と甘さと、タルトのサクサクとした食感、カスタードクリームの濃厚さが合わさって、いくらでも入ってしまいそう。

そう思えるほど美味しいものだった。


「美味しい」


死にかけの表情筋が動いた気がした。


「甘いもの好きなの?」

「あ、はい……好きです」


素直に答えると、北川さんは一瞬だけ目を丸くさせていた。

意外に見えたのかな。かつて仲の良かった子から「無糖を平気で飲んでいそう」と言われたことがある。

実際は砂糖を多めに入れないと飲めないくらいの甘党人間です。


「やっぱり、食べている時幸せそうだったよ」


北川さんはそう言っては、甘さのある柔らかい笑みを私に向けた。