翌朝、悠くんに渡すガトーショコラを持って、一人で登校した。

悠くんはこれまでのように送迎すると言い出したけど、経過に問題ないとはいえ、油断出来ないから丁重にお断りした。

ケガが悪化したら悲しいと伝えたら、何とか納得してくれて安心した。

放課後の待ち合わせは、悠くんのおうちの最寄り駅になってしまったけど。




学校に着き、いつものようにそっと靴箱の中を覗く。

今のところ嫌がらせはないけれど、今までの癖で用心してしまう。

すると、私の上履きの上に三通の封筒が置かれていた。

それを目にした途端、息がつまって苦しくなる。

過去に、誹謗中傷の手紙も入れられたことがあるから、それを思い出してしまい、手先が震え始めた。


“響、この先辛いことがあったら、俺に頼って……”


以前、私に言ってくれた悠くんの言葉を思い出した。

ああ、そうか。私はもうひとりぼっちで耐える必要はなくなったんだ。

嫌な夢は誰かに話すといいと耳にしたことがある。

これは現実で起きたことだけど、勇気を出して悠くんに打ち明けよう。

悠くんがいれば、私は何度でも立ち上がれる。

いつの間にか手先の震えが治まって、私はその封筒を取り出した。

それを開封することなくリュックサックに入れた。

何事もなかったかのように上履きに履き替え、別室登校の場である保健室へ向かった。