抱き締め合っているところを瑞穂さんと瑞穂さんのご両親に見られてしまった。

あ、穴があったら入りたいくらい恥ずかしかった……っ。

そのお陰か止まらなかった涙が引っ込んでしまったよ。

瑞穂さん一家の方々は訝しむことはなく、にこにこと微笑みかけていた。


「お、お邪魔しました……っ」


頭を深く下げて、お暇する。


「響、また来てね」


ドアを閉める前、悠くんは私にそう言って手を振ってくれた。


「うん、また来るねっ」


私は大きく頷き、ドアをそっと閉めた。




うう、心臓が暴れてる……っ。

まだ真っ赤なになっているだろう顔で廊下を歩く私は、さぞかし奇異に映っているだろう。

その途中、コートのポケットに入っているスマートフォンの振動に気付き、取り出した。

画面には川端さんからのメッセージの受信の通知が来ていた。


《響ちゃん、送るから南玄関まで来て》


川端さん、瑞穂さんのお母さまと鉢合わせないように隠れていた?


《いいんですか?》

《響ちゃんを一人で帰したら、北川にどやされる》


悠くんがそんなことをするような人じゃないと思うけど……。


《俺を助けると思って送られて?》


どうして助けられることになるのか分からないけど、そう言われたら頷くしかない。


《分かりました!》


猫のゆるキャラが敬礼するスタンプと一緒に返事を送ると、指定された南玄関へ向かった。