お別れは成立することなく、今まで通り彼氏彼女でいられることが分かり、私の抱えた大きな不安はだいぶ軽くなった。
でも、まだ完全にはなくならないし、悠くんに謝らなきゃいけないことがある。
「……今まで隠してごめんね」
深く頭を下げる。
「文化祭で桐谷さんが言ってたこと……中学の頃にしたって言ういじめは本当にしてないの。でも、仲間はずれや嫌がらせされたのは本当なの。こんな私を知って、悠くんに幻滅されるのが怖かった……」
本当は助けてって何度も縋りたいと思った。
でも、悠くんまでデタラメを信じたらと思うと、打ち明ける勇気がなかった。
「響が人をいじめる子じゃないのは分かっている。俺こそ、学校で辛い思いをしていたことに気付かなくてごめん……俺は駄目な彼氏だね」
悠くんは顔を俯かせて、手のひらで顔を覆い隠したままポツリと呟いた。
まるで泣いているように見えた。
自分の責めるような言い方に胸が痛む。
「違うよ……」
どうか、私のことで悲しまないで。
「そんなこと、ないよ……悠くんは、悠くんだけは私を信じてくれた。傍にいることを許してくれた……駄目な彼氏じゃないよ」
悠くんが他の人と同じかもしれないと決めつけていたことに、罪悪感が芽生えていく。
駄目なのは私の方だよ。
悠くんに信じて欲しかった癖に、私は勇気がないばかりに疑っていた。
「響、この先辛いことがあったら、俺に頼って……溜め込んで壊れる方がもっと辛い。響の全部受け止めるから」
悠くんは私を引き寄せて、優しく抱き締めた。
久し振りに感じる体温に、また涙腺が決壊した。
私は、瑞穂さんと瑞穂さんのご両親が来るまでずっと、悠くんに抱き締められていた。