「失礼、します……」
文化祭の日以来、久し振りに悠くんの顔を見た。
ベッドで眠っている悠くんは、刺されていたとは思えないほど穏やかな顔付きをしている。
揺り起こせば、今にも目を覚ましそうだ。
「悠、くん……」
声に出た大好きな人の名は、弱々しく空間に消えた。
私が、逃げ出さなければ、悠くんはこんな目に遭わずに済んだのに……私の弱さが招いたんだ。
私の中の罪悪感と自己嫌悪がもたげる。
私のせいで、ごめんなさい……。
何度も何度も心の中で謝罪を繰り返しながら、眠る悠くんをしばらく見つめていた。
頬を伝う涙に気付き、自分の涙腺の脆さに内心呆れてしまう。
「刺されるのが私なら、良かったのに……」
私も近くにいたのに……月見里さんにとって、彼女の私は邪魔な存在でしょう?
胸に留めていた本音が、ポロリと零れ落ち、病室内に静かに広がった。
「響ちゃん、そんな悲しいこと言わないで。心配しなくても悠はその内目が覚めるよ」
瑞穂さんは私にそう言って優しくいさめた。
「ごめんなさい……でも、悠くんがこんな目に遭ったのは、私のせいですから……」
「悪いのは加害者だよ。いくら好きな人に相手にされないからって傷付けていい理由にならない」
そう言う川端さんは、手のひらで私の頭をぽんと優しく置いた。