川端さんに連れられてたどり着いた先は、大きな総合病院の一角にある個室の病室だった。

ドア付近のネームプレートには悠くんの名前があって、本当に入院しているんだと痛感させられる。

ここに悠くんが……。

閉ざされた病室のドアを見つめていると。


「あら、」


背後から一人の女性の声が私の耳に届いた。

ドアに向けていた視線を、振り向いて声の主に向けると、そこにとても綺麗な女性がいた。

彼女は私と同じくらいの背丈があり、瞳と髪は悠くんと同じ色彩だった。

私は一方的に彼女を知っていた。

悠くんの従姉妹さんだ。

結婚式の写真と、夏休みのカフェで居合わせた時に顔を見たことがあった。


瑞穂(みずほ)ちゃんじゃん」

「川端さんと……もしかして、悠の彼女?」


頷いていいか迷いはあったけど、現時点で保留中の状態だから、ためらいつつもゆっくりと頷いた。


「初めまして。笹山響と言います」


私は瑞穂さんに一礼をした。


「初めまして。あたしは悠の従姉妹の桜宮(おうみや)瑞穂です。響ちゃんって呼んでもいいかな?」

「はい……すみません、突然来てしまって。本来なら連絡を入れるべきでした……」

「大丈夫だよ。悠に会いに来てくれて嬉しい」


嫌な顔を見せない瑞穂さんの態度に、密かにほっと息をついた。


「響ちゃん、入って」


ドアを開けて中に入る瑞穂さんに続いて、私は川端さんと共に足を踏み入れた。