川端さんに促されてれカウンター席に座る。
しばらくして、私の目の前にマグカップが置かれた。
中にはほかほかと湯気が立つココアが注がれていて、甘い香りが鼻をくすぐる。
「ココアは好き?」
「はい、好きです」
「よかった。飲んで」
「いただきます……」
お言葉に甘えて、川端さんが用意してくれたココアをヤケドしないようにこくりと飲んだ。
ほどよい甘さが口の中に広がっていく。
「美味しいです。ありがとうございます」
「ゆっくり飲んでてよ。後で話するから」
川端さんは一体私に何を話すんだろう……。
私は自分の指先の震えに気付いた。相当緊張しているみたいだ。
その緊張を紛らわすようにココアをゆっくりと味わった。
「ごちそうさまでした」
空になったマグカップをそっと置いて、緊張した面持ちで川端さんを見つめる。
すると、川端さんは目を伏せて。
「北川は今入院しているんだ」
重々しい口調でぽつりと呟いた。
「……っ!」
川端さんの言葉は、私に大きな衝撃を与えた。
悠くんが、入院……病気にかかってしまったの? 命に別条はないよね?
私は元カノで赤の他人でしかないのに、悠くんが心配でならなかった。
「悠くんに、何があったのですか?……」
「響ちゃんの学校の文化祭があった日、近くで傷害事件が起きたのは知ってる?」
川端さんの問いかけに無言で頷く。
沈黙はしばらく続いた。
その沈黙は数分しか経過していないかもしれないけど、とてつもなく長く感じた。
川端さんはとても言いにくそうに、私に視線を向ける。
まさか、違うよね……悠くんは関係ないよね!
切実に願ったけれど、その願いは虚しく砕け散ってしまった。
「────被害者はあいつ、北川なんだ」


