翌日、学校は相変わらず居心地の悪い場所だ。


「見てよ、笹山さん怪我してる」

「修羅場かな?」

「なんで凝りないんだろうねえ」

「病気なんだよ。奪って男を手玉に転がすのが楽しくて仕方ないんだって」



だけど、周りの陰口がすり抜けてしまうほど、私は夢見心地になっていた。

放課後になれば北川さんに会えるんだから。

お礼にお茶をご馳走したいな……北川さんにも予定があるからその辺りも確認しなきゃ。

彼女、いるのかな?

あれだけ、格好いい人放っておかないもん。

私は彼の過去の彼女を一人知っている。

かつて通っていた女子校の先輩。

北川さんと同級生で、桐谷さんみたいな小柄で愛らしい美少女だった。

天と地がひっくり返ったって、私を異性として見る日がくることはありえない。

だから、ほんのわずかの会える時間を大事にしたい。

後三時間、二時間、一時間……。

私は放課後までの時間を指折り数え、また会える時を待ちわびていた。



そして、待ちに待った放課後がやって来た。

私はホームルームが終わると同時にリュックサックを背負い、いの一番に教室を出ようとした。



しかし……。


「待って、笹山さん!」


担任(あくま)に呼び止められてしまった。