「お、見ろよオコゼだ! おもしれー顔!」

 ドキドキしている私の気も知らないで変な顔のオコゼの所ではしゃぐ秋葉。

 そ、そうだ。これはフリだ。
 付き合ってるフリなんだから、手ぐらい繋いでも当然!

「気にするな、気にするな……」

 私がブツブツ呟いていると、秋葉が私の顔をひょいとのぞきこんだ。

「何ブツブツ言ってんだ」

「う、ううん、それよりこれ、面白いね!」

 私はとっさに目の前のサメの水槽を指さした。

「面白い? このサメが?」

 秋葉はじっとサメの水槽を見つめた。

「別に、普通のサメだけど」

「うんっ、でもこのサメ、少し秋葉に似てない?」

 私が言うと、秋葉は少しむくれた。

「……似てねーよ」

「ええっ、そうかなあ」

 少し似てるけどな。目付きが悪いところとか、不機嫌そうなところとか。

「じゃあ、花帆はこのエイだな」

 ニヤリと笑って同じ水槽のエイを指さす秋葉。

「エイ? 私が?」

「そう。似てるだろ。この二ヘラニヘラッとした顔」

「ニヘラッとなんてしてないっ!」

「いーや、してるね!」

 くしゃりと微笑む秋葉。

 水槽から差し込む淡い光。

 青く照らされた笑顔が優しい。

 良かった。

 最近根を詰めてたみたいだけど、少しはリラックスできたのかな。