「よしっと」
文房具店で買い物を終え、家についた私は、さっそく買ってきた色画用紙を広げた。
「その色紙どうすんだ?」
目を丸くする秋葉。
私は油性ペンのキャップを開けながら答えた。
「私、考えたんだけど、和菓子にもポップを書いたらどうかなあって」
「ポップ?」
「うん。規模の大きい人気店に勝つには、小さくても行くだけでワクワクして、思わず和菓子が買いたくなっちゃうようなお店にすればいいと思うの」
「なるほど」
キョトンとする秋葉。
私はあっと息を吸い込んだ。
「ご、ごめん。私、ただの新人バイトなのに、差し出がましいかな?」
「いや」
秋葉は首を横に振る。
「すげー嬉しいよ。花帆がそこまで店のことを考えてくれるなんて」
秋葉は、そう言うとペンを手に私の横に腰掛けた。
「近くに良い店ができたからって、落ち込んでる場合じゃねーな。俺も頑張らねーと!」
「うん、一緒に頑張ろうね!」
そしてその日、私と秋葉は、遅くまでポップや飾り作りに励んだのでした。
「なんかいいな、こういうのって」
夕ご飯のお鍋を囲みながら、秋葉は笑う。
「わくわくする。文化祭の前日みたいだ」
「うん、楽しいね」
そんな私たちの様子を見て、悠一さんは笑った。
「……どうやら潜入捜査作戦は大成功だったみたいだね」