【完】溺愛体質の彼は私に好きと言わせてくれない

「どうしたの?俺のこと知りたいならまずは榛名ちゃんのことを教えてよ?」







これはただの八つ当たりだ。






自分が情けなくて仕方なくて、思うように気持ちを言葉に出来ない残念な男の。







「私は…先輩のことが好きです。どんな噂が流れようと、私の気持ちは変わりません…。だけど今の先輩は私がずっと好きだった先輩じゃない…!」







そうだよ。今の俺はキミが好きだった一ノ瀬昴じゃない。







「なら嫌いになって。俺のこと…」






唇をなぞっていた指が離れると今度は片手で頬を包み込み、依乃里の唇に自分の唇を重ねた。






「んっ…!」






叩かれた瞬間、俺は我に返った。どれだけ最低なことをしたのか…その痛みは頬の痛みより、強く感じた。






「榛名、ちゃん…」







「こんなの全然嬉しくない。私が知っている先輩はいつも優しくて、思いやりがある人です。こんな酷いことをする先輩は私が知っている先輩じゃない…!こんな事になるなら私は八雲くんと付き合った方が…ごめんなさい」