「カスミ……!生きている間、お前は全く役に立たなかった。死んでからも私を邪魔するのか!!」

怒鳴り散らす男性をイヴァンは呆れたような目で見る。頭に浮かぶのは絵に描かれた人物たちが生きていた頃の記憶だ。男性はいつも、女性たちに今のように怒鳴っていた。イヴァンの頭にはそれしか記憶されていない。

「相変わらず、愛せるのはあの人だけかぁ……」

イヴァンの呟きは、怒り狂っている男性の耳に届くことはなかった。



マオ国から帰国して約一ヶ月ほどが経ったある日のこと、イヅナ・クリアウォーターはギルベルト・エーデルシュタインに呼び出され、エーデルシュタイン家の屋敷にいた。

屋敷の中ですれ違うアレス騎士団の団員たちは、みんなピリピリとした空気を纏い、表情も固い。エイモン・ウィーズリーがマオ国での調査の報告書を提出してから、みんな気を普段以上に張り詰めている。

マオ国の調査で、妖の体を作り変えている者たちがいるということがわかり、アレス騎士団の団員たちはその人物や呪術師のイヴァンを探しているが、全くと言っていいほど手がかりがないのだ。