あやかし戦記 妖艶な夜に悪夢を

「どうしよう……」

一瞬焦ったものの、すぐにイヅナは式神で連絡を取ろうと白猫を召喚しようとする。だがその手は、横から伸びてきた何者かの手に掴まれてしまう。

「ひゃっ!」

「ああ、驚かせてすみません」

驚いたイヅナに謝り、その人物は頭を下げる。イヅナの手を掴んだのは三十代ほどの男性で、連れと思われるもう一人の男性も頭を下げた。

「可愛らしいお嬢さん、よろしければ私たちの店に来ませんか?」

「えっ、でも……」

店の品物に触れれば、イヅナにかけられた魔法は解ける。イヅナが考えていると、「見るだけでも結構ですので!」と男性たちに手を引かれ、無理やり歩かされる。

「こ、困ります!離してください!」

イヅナは慌てて言ったものの、その言葉は人々の騒めきによってかき消されてしまう。そして、サバト会場の端の辺りにある木造の建物のドアを男性が開けると、不安でいっぱいだったイヅナの瞳が煌めいていく。

「これって……」