慶はしばらくして「また来るよ」と言って帰った。

玲子の様子が気になったが、少し見守る事にした。

それから、玲子は部屋の中を一人で動き回るようになった。

以前は僕の存在を確かめるように、どこかに触れていないと心配みたいで、一人で動き回らなかったのに。

僕はハッと気づいた。

慶の存在か?

あいつの純粋な、子供みたいな気持ちが、玲子の凍りついた心を溶かしていったって事なのか。

完敗だった。
僕は玲子に聞いてみた。

「玲子、僕に対して不安があったのか、それならごめん、僕は……」

「光、私の方こそごめんなさい、光の気持ちに気づけなくて、わかっていたはずなのに、忘れていたみたい、慶くんの話を聞いて思い出したの」

「慶とどんな話をしたんだ」

玲子はニコッと笑って「ナイショ」と人差し指を自分の唇に当てた。

そんな姿が可愛くて、玲子を抱き寄せた。

唇にキスをした。