「秦さん今までありがとう。今後は私一人で結構です。今までご苦労様でした。タクシー、止めてください」
運転手に車を止めさせ、一人タクシーを降りる。
「ちぎ様、なにを………!?」
私を必死に引き止めようとする秦さんに、冷たい目を向け、
「さようなら」
お別れの言葉を口にした。
「―――――ちぎ様!!! お待ち下さい!!! ちぎ様!!!」
秦さんの叫ぶ声と共に、タクシーが私を追いかけてくる。
………もういいよ。秦さんはもう、自由になって。私なんかを気にかけないで。
追いかけてくるタクシーの方向へ振り返り、『もう、追いかけてこないで!!』と、大声で叫んだ。
次の瞬間、視界がグラつき、足を踏み外してしまったことが瞬時に分かった。
ズササササと勢いよく転げ落ちる。
痛さより恐怖が勝つ。
……………ああ、このまま死んでしまうんだ。
死んだら過去にタイムスリップしていないかな……そしたらパパにこういう未来になることを知らせる事ができるのに。
密かな願いと共に身を任せていると、勢いが弱まった。
これ以上転げ落ちることはなく、目を細めて開いてみると、一面には草原が広がっていた。



