「イヤです! 秦さんと一緒じゃないと私……」
「大丈夫です。一緒に住んで下さる方は私より頼りになる方々なので」
「そうじゃなくて……それじゃ秦さんはどうするの!?」
「私も私で古民家に身を隠しますのでご安心下さい」
……何それ。
ついさっきまで『秦さんが隣にいてくれて良かった』と、思っていたばかりだったのに。こんな突然一方的に決められるなんて納得いかない。
「パパから言われたの!? 全部パパから……」
「仕方がないのです。分かってくださいませ」
秦さんは深々と頭を下げた。
タクシーの運転手はミラー越しに、心配そうに私達をチラチラと見ていた。
パパのおかげで会社が大きくなって私達は豊かに暮らせていた。それと同時に二人とも好き勝手に行動することが増えた。
他人から因果をかってしまった代償だと、私は思う。
もうパパとママの言いなりでは生きたくない。
このままヤクザに捕まって殺されるか、運良く生き抜いて性奴隷にでもされるもんなら、今死んだほうがマシだ。



