「このッ!役立たずがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

刹那、律と凪の隣で団長が髪を逆撫でて椅子を蹴り飛ばす。顔は真っ赤に染まり、怒っていることは一目瞭然だ。

「律!」

動けない律の腕を凪が掴み、出口に向かって走り出す。その後ろを団長が「待て!!」と言いながら追いかけてきたものの、「僕らが食い止めるから、君たちは逃げろ!!」と言いピエロたちが団長を押さえ込んでくれた。

律と凪は振り返らずに走る。息が切れ、出口までこんなにも遠かったのかと思ってしまうほど走った。テントを抜け、ウェルカムボードの前を通り過ぎてゲートをくぐり抜ける。その刹那、二人は力尽きてその場に倒れ込んだ。

「律」

「凪」

お互いの無事を確かめ合い、二人が振り返ると、そこにはサーカスなどどこにもなく、ただの空き地が広がっている。二人は見を震わせ、もう一度足を動かしてその場から離れた。

あのサーカスは一体何だったのか、哀は何故あそこでピエロになっていたのか、真実はあのサーカス団にいる人間しか知らない。