「さぁさぁ、最後は今宵の目玉!少女ピエロによる綱渡りでございます」

そんな声が響き、律たちが何メートルも地上から離れた上を見上げれば、一本の太いロープがあり、その上を今、先ほど団長に声をかけたピエロが歩いているところだった。

あんなところから落ちたら、そう思うと律の手に汗が滲む。凪もハラハラした様子でゆっくりと縄の上を歩くピエロを見ていた。

半分ほどは問題なくピエロは渡っていた。団長は「あと半分だな……」とニタニタと笑う。しかし次の瞬間、ピエロの体が大きく揺れた。そしてその姿が縄の上から消える。

「えっ!?」

律と凪は同時に叫んでいた。ピエロは真っ逆さまに笑ったまま落ちて行く。笑った顔のお面が取れた。そこにあった顔はーーー。

「逃げて!」

行方不明になった幼なじみの哀だった。訳がわからず、律と凪は椅子から立ち上がる。それと同時に哀の体は地面に叩き付けられ、血の海が広がった。痛いはずなのに、哀の亡骸は笑っていた。安心しているかのように、喜んでいるように、笑っている。