ちょっとだけ、




「名前書き忘れないでね。
いっつも名無しの権兵衛なんだから」


「わかった」



うなずけば、満足げにそいつは笑った。


こんなに短い会話でも
俺の心はわかりやすく喜んじゃって。


バカみてーだな。


前を向いてしまったそいつのポニーテールを、ふたたびじっと見つめる。