「・・・はい」
正直自信はない。
記憶を失ってからの日々の中で、今日は一番動いている・・・。

『荷物を部屋に運ぶのを手伝ってくれますか?』
『もちろん。手伝いますよ。その間、メーター回るけど平気ですか?』
『大丈夫です。』
私の返事に、紫苑はドライバーに何やら話しかけていた。

タクシーが地下の駐車場に停まると、紫苑は先に降りて、反対側の私が座っていた後部座席のドアを開けた。
「ゆっくりでいいよ。」
私に手を伸ばしてくれる紫苑。

なんだかこれから見る、記憶に全くない世界に緊張してしまう。

生まれて初めて見た本物のニューヨークの街並み。
それだけで頭痛がしたのに・・・実際に私が住んでいた部屋なのに、全く記憶が戻りそうにない。