「桐乃っ!?」
痛む頭に手をあてながら、何とか目を開けると至近距離に名前も知らないイケメン・・・。
黒髪短髪。整った顔の小ささに、簡単に目に入ってきそうな感覚を覚える。
すらっと長い指の手を、私の手に重ねるその人に、思わずくぎ付けになる。

「・・・あの・・・ここ・・・」
何とかイケメンから視線を外した私はあたりを見ようと頭を動かそうとして再び痛みに襲われた。
「動かないほうがいい。頭を強くぶつけてるんだ。」
イケメンの言葉に、私は頭を動かさないように視線だけ動かす。

「病院だよ。事故にあって、ここに運ばれたんだ。」
「・・・事故・・・?」
「そう。ニューヨークの地下鉄の階段で、人とぶつかって落ちたんだ。安心して、お腹の子は無事だ。」
目を細めて私の頭を撫でるイケメン。

「・・・夫・・・お腹の子・・・へ?」
急に入ってくる情報量の多さに私の体が拒絶するように震える。