その突然の、苛立ちの種が、どこだったのか私には、いまいち理解出来ないけれど。
「ねぇ。栗山さんは、そんな人生、楽しいと思うの……?」
「思うよ。宝探しみたいじゃない」
私が自信満々に答えた途端、紙が破れる音が昇降口に響いた。
現実としては有り得ないが、それくらい私には耳をつんざく程の音に聞こえたのだ。
「あ……」
声にならなかった。
あれ程、思い悩んで書いた手紙が、ハラハラと舞う紙吹雪になって、灰色のコンクリートの地面に降り切るまで、私はひたすら目で追っていた。
なんて呆気ない。
散り散りになってしまって、届けることは、もう不可能だ。
しかし、元々、宛先は不明だったのだし。
それに例え、お守りが無くなったとしても、私自身の気持ちは変わらない。
健太くんへの気持ちが、変わることはない。
そう思ってはいても――。
「酷い。ここまでするなんて……」
ちぎれた切れ端を、そっと拾い集める。
「私、海藤には、関係無いって言ったのに」
「一瞬でも、俺に揺らがなかった栗山さんにイライラしたから」
「……本当に、自分中心の人生なんだね……」
「だって、俺の人生だもん」
あたかも、当たり前のことだと言い張る海藤くんに、この人とは本当に理解し合えないのだと思った。
もう何を言っても、この人には無駄なのだ。
辺りに散らばった紙切れを1つも、その場に残さないように搔き集めた。
私1人だけが地べたに這いつくばっていても、海藤くんは何のつもりか知らないが、ずっとその場に立ち尽くしている。
それどころか、私を見下げている。
その時、彼が不意に顔を上げた。
そして、彼の声が半音ほど、高くなった気がした。
「あれ? 蜂矢じゃん」
つい海藤くんの発した名前に、反応してしまった。



