宛先不明ですが、手紙をしたためました。




きょとんとした顔で、くるくると封筒を回し続ける。



「これ、一体、誰宛て? どこにも相手の名前なんて、書かれてないじゃん。自分の名前すらも書き忘れてるよ」



当然の如く、私は頷いた。



「まだ、誰にも宛てられないから」



私の気持ちを「健太くん」に知っておいてほしいだけの、手紙やラブレターとは言い難いものだから。

自分の為に書いた、私のお守りだから。



「……栗山さんって時々、意味の分からないこと言い出すよね」

「そうかな」



海藤くんの嫌味も、軽く受け流す。

お互いに黙ってしまって、何となく気まずい雰囲気になる。

どうだって良いと言えば、良いのだが、繋ぎだけの意味合いだけで、余計な口が動いてしまう。



「私の好きな人は、きっと私のことをそういう対象だと、思っていないだろうから。その人の彼女は私じゃなくったって、良いの。私じゃなくても、他の子を愛せる筈だから」



突然、始まった特に意味の無い私の宣言の様な言葉に、海藤くんは返す言葉が浮かんでこないようだ。

きっと、また頭のネジが外れた女子なのだと、思われているに違いない。

それでも、構わない。

どう転んでも、海藤くんが私のことを好きになることは無いと、言い切れる。

だから、今更これ以上、悪く思われたところで、何も問題なんて無い。

そう思ったら、今度は吐き出したくて堪らなくなる。



「私以外の人を彼が好きになるなら、彼は、ずっと本気で愛し続けられる人を見つけなきゃ。私は私で、本当に私のことだけを『好きだ』って想ってくれる人だけに、出会いたいって思ってるの」

「自分は、その彼のことを好きなのに?」