突然、冷静になった頭の中の、脳内会議をシャットダウンしようとした時。

気の強そうなアラサー女性風の私が、手を上げた。



「私、華世のことだから、今みたいに焦って、手紙を渡し損ねちゃうなんて、確かに、きっと普通に有り得ることだわ。
それなら、手紙は渡す為なんかじゃなくて、自分の為に書いたら良い。
それに、いざ告白! ってなったら、どうせ口で言っちゃうんだから、手紙はお守りみたいなものよ。だから、内容なんて、カンニングペーパー程度で十分!」



最後の清々しい程の私の強気な微笑みは、本来の私の心に深く突き刺さった。



「手紙はお守り……。自分の為に、書く……。」



それに今回は、良い返事をもらえなくったって、別に良い。

私の気持ちを健太くん知っておいてもらいたい、ただそれだけだから。

脳内の1人の私のお陰様で、便箋の中身はスラスラと埋まっていく。

――ありがとう、私。

方向性が決まれば、あっという間に手紙は完成する。



「出来た……」

息を吐きながら、達成感をひしひしと感じる私。

便箋を封筒へと閉じ込める。

LEDの部屋の電気に透かす様に、翳した。

そこには、宛先もろくに書けないくせに、立派にしたためた手紙が完成したのだ。