「そういう……俺を自惚れさせてくれるところ。俺が貴女の側に居ても良かったんだ、って思わせてくれる。だからこそ、このチャンスを逃したくないって、手紙を渡したのもある。……なんて話、華世には、まだ難しいかな」



わざわざ、煽るような言い方をされると、少しだけムッとしてしまう、かもしれないけど。

――でも、本当に分からない。



「めちゃくちゃ簡単に考えれば、好きな子が他の人と喋ってる姿、見てるだけでもモヤモヤする、とかね」

「2人は、ずっとそうに見えるけど」



私は呟くように、言った。



「え? そんな感じ、出ちゃってる?」



別に聞かれたくて、言った訳ではない。

単なる本音だ。



「出てるよ。買い物してても、お母さんが携帯会社の勧誘で男の人に話し掛けられてる時とか、お父さん、なんか厳ついもん。笑顔を忘れてる」

「それは無意識だったなぁ」



すると、お父さんが小さく溜め息を吐いた。



「あんまり縛り付けるのは、良くないと思ってはいるんだけど、上手くいかないもんだよ。自分だけ、ってしたいと実際は思うけど、そうは出来ない。いくら相手を好きでも、相手を縛ったらいけない」



私も束縛したくないし、されることに関しても嫌だと思うから、同感で静かに頷く。