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「お父さんさぁ……」

「うん?」



夕食後。

アイスクリームを頬張りくつろぐお父さんの正面に、机を挟んで座った。

突拍子もない娘の声掛けに、アイスクリームを掬う手が、一瞬だけ止まる。

そんなお父さんに容赦無く、聞きたいことをどストレートに切り込んだ。



「なんで、お母さんに手紙を渡そうと思ったの?」

「手紙? 何のこと」



お父さんが、本当に分からないという風に、目をぱちくりとさせる。

そうか、手紙というから伝わらないんだ。

それなら、両親2人しか知らないキーワードを出してしまえば、1発で伝わる筈だ。

その紙に書いてあった、たった1つだけの内容を。



「手紙っていうか……電話番号のメモ?」



それを言った途端、お父さんが吹き出す。

微量の飛び出したアイスクリームが、机に着地したのを見て、思わず顔をしかめてしまった。

そして、そのままお父さんをじっと見て、ティッシュで慌てて拭き取っている姿を見守る。



「なっ、なんで。それを華世が知ってるの?!」

「お母さんが見せてくれたの。ずっと手帳に挟んであって、大切に残してあったみたい」

「んんっ。あの人のそういうところには、本当に敵わないな……」



お父さんが項垂れる。

顔を覆って、自分だけの世界に浸りそうではあったが、すかさず気になったことを突っ込んでいく。



「そういうところ……?」