「きもっ! 勘違いしないでよ? 私だって人の事、悪く言うの本当は気分悪いんだから。本当は言いたくなんかないの! あんたが言わせてんの! 分かる?!」

「え、やっぱり優しい……」

「キモい!!」



何故か、更に頬を赤らめる海藤くん。

それに対し、楓はますます嫌悪の表情を強める。

楓に何と言われても諦めない海藤くんの姿を見ていると、叶わない恋を見ているからこそ、やはり可哀想になってきた。

好きな人を追い続けるのは素敵なことで、否定はしないが、出来れば、相手の居ない人を純粋な気持ちで追い続けたいものだ。

騒動も一段落し、海藤くんは1人、教室を後にした。

家に帰ったのか、噂通り、他校の子たちと遊びに行ったのか、もはやこちらの知ったことではない。

私たちも安心して、明日から、また学校生活を送ることが出来る。



「2人とも、ありがとう。巻き込んじゃって、ごめんね」

「巻き込まれたなんて、思ってないから大丈夫。それより、華世が無事で本当に良かった」



楓からの熱い包容を受け取る。

そして、そのまま何気なく気になっていたことを、健太くんに尋ねる。



「健太くんは部活、本当に大丈夫だった? こんなことで、休んでもらっちゃって」

「問題無い」



すると、楓が間に入って、健太くんを突っつく。



「で? 休みの理由は、何にしたんだっけ?」

「腹痛って、言ってあります」