楓は激しい運動をした訳でもないのに、息が上がっていた。
ここまで言わせてしまった私も、あまりに頼りなくて、情けなくて、申し訳なくなる。
「もういいよ、楓」
「華世、全部の人とは言わないけど、男はしつこいものなの。舐めてかかると痛い目見るよ」
「でも、もうさすがに……」
「華世は優しいからだよ」
そう言いながら、私の両頬をグリグリせる楓は、いつもの優しい寄りの彼女に戻っている。
私としては、もうここで収まってほしいところだ。
その思いも無情に、海藤くんが諦めんとばかりに、口を開いた。
「僕は……」
「まだ何かあんの?!」
「ち、違うって。僕は楓ちゃんのことを、見た目だけじゃなくて、純粋に好きだよ。その頭の回転の速さ、はっきりした性格も……僕、強い女性が好きで……」
「あんた、頭悪いでしょ」
「ひっ、ちょっと、だから、楓ってば」
「だから、海藤、あんた。私に見た目だけ、って指摘されたから、言い改めてるんでしょ? 今」
楓の強過ぎる言い方に、冷や冷やする。
これ以上は、楓の人間性を疑われかねない。
親友として、そこは守り通してあげないと。
本当に友達思いの良い子なのは、間違いないのだから。
とにかく海藤くんの心配も少ししながら、様子を窺う。
私は思わず、ギョッとした。
「ヤバい……。楓ちゃんに厳しいこと言ってもらうと、すごくドキドキする」
なんと海藤くんの頬が、赤く染まっているではないか。
これには、健太くんも私も顔を歪めていた。



