そんな私の頭をまた、くしゃくしゃと撫でて、健太くんが逸れていた話を引っ張り戻す。



「で、俺が2人に伝えておきたかったのは……。海藤が俺と華世ちゃんの2人にこだわってるように聞こえるけど。そうじゃない。あいつが関心があるのは、華世ちゃんのことだけだ」

「私、だけ?」

「そうだ。昨日だって『俺に』『俺だけに』って、後あと『俺だけ笑ってよ』とかもそうだ。まるで、華世ちゃんのこと、物か愛玩動物みたいに言いやがって……」

「何それ、きも」



楓の顔が不機嫌の度合いが、極まっていく。

健太くんの、そんな乱暴な言葉遣いも聞いたことが無い。

そして、口調が戻ったらしい彼が私の名前を、そっと呼び、更にこんなことまで言った。



「華世ちゃんのことは、絶対、俺が守りたいと思う。それに、楓さんも側に居てくれるだろうし。だから、安心して」



そう言う彼の瞳が、潤んでいるようだった。



「健太くん、泣いてる……?」



差し伸べかけた手は素早く捕まり、健太くんは首を横に振った。



「泣いてない。今度こそ、ちゃんと守らせて」



今まで十分過ぎるくらいに助けられ、守られていると実感しているのに。

これ以上、甘えるなんて申し訳ないと私は思っているのに、これ以上「守らせて」なんて。

仲良くするなんて、今更、無理だと言ったくせに、守るから、なんて。

私の中では、これ以上は上手く消化出来そうもない。