『華世ちゃん、海藤のお気に入りになってるから、あんまり近寄らない方が良い』



不意に健太くんの忠告が頭を過る。

――本当に一件落着したのかな?

また怖い思いをするのは、御免だ。

いざというときに、何か協力してもらえるかも、と話すことを決心した。



「楓、実は昨日の掃除の時間にね――



全て、正直に話した。

海藤くんに距離を詰められたこと。

彼の本性を見たこと。

少し傷付くようなことを言われたこと。

そして、その後、健太くんが助けに来てくれたこと。



「――だから、あんまり海藤くんには関わらないようにしようとは思ってるんだけど、あっちは態度も変わらず、あんな調子だから……」

「許せない」



楓の声が震えている。

普段と様子の違う楓に、何も言えなくなっていると、彼女の方が先に口を開いた。



「私だつて、前に言ったよね。あいつとは関わらない方が良いって」

「ご、ごめん……」



ただならぬ楓の様子に、怖じ気付く。

おどつく私に、何故か楓は驚いて、私の手を慌てて握った。