さすがに迷惑だと、文句をつけようと顔を上げると、海藤くんはいつも通り微笑んでいた。
その笑みに、ほんの少し、本当にほんの少しだけ背中がゾワッとしてしまった。
イケメンに微笑まれている筈なのに。
何を考えているか分からない顔。
こんなに自分が怖がることがあるなんて、思ってもなかった。
「ちょっと……海ど、くん。ふざけるのは、止めて」
「じゃあ、俺にも、もっと話しかけてよ」
――俺に、も?
「そんなこと言われても、話題が思い当たらないし……」
「『健太くん』とは、ちょくちょく話せるのにね?」
何となく、鈍感な私にも分かったかもしれない。
教室で感じていた違和感。
根拠はまだ無いけど、原因は海藤くんの、この視線だったのかもしれない。
胸の内が無性に、ざわつく。
それよりも、彼から「もっと話しかけてほしい」と言われても、私と海藤くんとで、何を話すことがあるだろう。
考えてみても、1つも浮かばない。
それに女子から人気者の彼と1対1で関わるなんて、それだけでも十分、反感を買うのは目に見えている。
海藤くんの顔を再度、確かめる。
真っ黒な瞳。
それは純の日本人であるから、当然なのだが、そうではない。
そこに、何も感じ取れない。
思わず、息を呑む。



