長い間、両親のお互いにさり気無く、愛し愛される関係を目の当たりにしてきた。

その影響で、私も特定のただ1人の人から、特別な愛を向けられてみたいと、考えるようになった。

私だけが、特別な訳ではない。

だけど、誰かの特別な存在になってみたい。



「私は……本当に私のことを「好きだ」って想ってくれる人だけに、尽くしたい」



すると、楓は机に肘をついた。



「でも、華世はさ、誰にでも尽くすじゃん」

「え。いや、そんなことは無いと思うけど……」

「人に頼まれると、絶対、断れないでしょ」

「うっ」

「この前だって、私がバイトの日に掃除当番、頼まれたって」

「それは、あの子たち、急ぎの用事があるって……」

「私の時もテスト前、1週間ずっと付きっ切りで勉強教えてくれたし」

「それは、楓だから」

「本当にありがと。で、あとはあれだ。海藤に代理でラブレターを渡しに行ってる! 何度も!」

「ちょっと! 声が大きいよ」

「事実じゃん。人伝いに告白なんて、どうかしてる」



腕組みをしながら、後ろにのけ反る楓の台詞に内心、慌てる。

この教室内にも、過去の依頼人の子たちが数人、居るのだから。